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『逃亡』帚木蓬生~戦後、帰国を懸けた壮絶な逃亡劇~【あらすじ・感想】

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あらすじ

時は太平洋戦争の終わろうとする時期。香港で諜報活動に従事していた主人公の守田征二は、幼少から教え込まれた価値観、仕事への責任感から懸命に働いた。

しかし、敗戦と同時に敵国の者たちに追われ、帰国すれば戦犯として、GHQの配下となった同胞に追われることとなる。懸命に戦った自分は何だったのか、悲しい運命の物語。

読書感想

壮大な舞台と逃亡に次ぐ逃亡の物語なのだが、とにかく食べ物に関する描写が多く、細やかな描写でよりいっそう印象深いものとなっている。

追われ続ける恐怖、潜伏し続ける孤独、そして飢え、とにもかくにも人間はこの究極的状況下において、欲求が食欲に集中するのだろう。

かつて上の息子の出産は、赤紙による出征で立ち会うことが出来なかった。

1945年8月15日、香港の地で敗戦兵となり、逃走が始まる。なんとか逃げおおせて帰国するも、同じ日本人である警察に追われる。

親族、友人など同胞達に戦犯と言われ、まだ逃げ続けなければならない。

国が放った号令に従い懸命に働いた結果がこれでは報われない。

何度も、この時代に生きることを想像しながら読み進めた。

目の前に迫り来る生々しい描写の連続に、生きようとする力を奪われ、やがて思考停止に陥ってしまう。

戦争という究極的状況は、平和な時代に生きる私などからすればあまりにも強烈すぎる。

あまりにも重く悲劇的な話ではあるが、帚木蓬生さんの作品には必ず一縷の希望がある。

これが数多くの悲しみへのせめてもの供養であるように思われ、私にとってせめてもの救いとなった。

著者について

1947(昭和22)年、福岡県生れ。東京大学仏文科卒業後、TBSに勤務。2年で退職し、九州大学医学部に学ぶ。現在は精神科医。1993(平成5)年『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞を受賞。1995年『閉鎖病棟』で山本周五郎賞、1997年『逃亡』で柴田錬三郎賞、2010年『水神』で新田次郎文学賞を受賞した。2011年『ソルハ』で小学館児童出版文化賞を受賞。2012年『蠅の帝国―軍医たちの黙示録―』『蛍の航跡―軍医たちの黙示録―』の2部作で日本医療小説大賞を受賞する。『臓器農場』『ヒトラーの防具』『安楽病棟』『国銅』『空山』『アフリカの蹄』『エンブリオ』『千日紅の恋人』『受命』『聖灰の暗号』『インターセックス』『風花病棟』『日御子』『移された顔』など著作多数。 — 本書より引用

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