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『ミレニアム2 火と戯れる女』 スティーグ・ラーソン 【あらすじ・感想】

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あらすじ

女性調査員リスベットにたたきのめされた後見人のビュルマンは復讐を誓い、彼女を憎む人物に連絡を取る。そして彼女を拉致する計画が動き始めた。その頃ミカエルらはジャーナリストのダグと恋人ミアが進める人身売買と強制売春の調査をもとに、『ミレニアム』の特集号と書籍の刊行を決定する。ダグの調査では背後にザラという謎の人物がいるようだ。リスベットも独自にザラを追うが、彼女の拉致を図る者たちに襲撃された! — 本書より引用

読書感想

読みどころ

  • 世界的人気を誇るスウェーデン発の長編ミステリ三部作の第二作目。三作とも映像化されており小説・映画の両方で楽しめる。
  • 前作で色濃く打ち出されていたテーマ「女性に対する暴力」は、本作においてメインテーマとなる。「女を憎む男を憎む女」リスベット・サランデルは、真っ赤な炎を燃えたぎらせる復讐の女神となる。
  • 前作よりミステリとしての要素は鳴りをひそめてはいるものの、魅力的な主人公リスベット・サランデルの人生を描いた魂の一作として読み応えのある作品。

前作「ドラゴン・タトゥーの女」を振り返る

あまりにも衝撃の大きかった前作。

私にとって「IKEA」ぐらいしか接点のなかったスウェーデンに、これからの持ち時間を全振りしてしまいそうなインパクトを残す作品だった。

『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』 スティーグ・ラーソン 【読書感想・あらすじ】

あらすじ 月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家の違法行為を暴く記事を発表した。だが名誉毀損で有罪になり、彼は『ミレニアム』から離れた。そんな折り、大企業グループの前会長ヘンリックから依頼を受ける。およそ40年前、彼の一族が住む孤島で兄の孫娘ハリエットが失踪した事件を調査してほしい

スウェーデンの近代史、経済に絡む疑惑、宗教、女性への暴力など社会問題をふんだんに盛り込んだ前作であったが、とりわけ「女性に対する暴力」については、本作によりシリーズ通じての主たるテーマであろうと予感させられた。

一作目ではこのシリーズの世界観や、主な登場人物を広く知ることができる構成となっている。これから読もうと思っている方は、ぜひ「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」から読むことをお薦めしたい。

二作目「ミレニアム2 火と戯れる女」における特徴

前作でも打ち出していた「女性に対する暴力」というテーマは、本作において完全にメインテーマとなっている。

そして前作の感想にも書いたが、このテーマのシンボルとして登場するのは「リスベット・サランデル」という女性調査員である。

前作の続篇ではあるが、作品としての変化がみられる。

ミステリとしての面白さは前作に比べるとかなり鳴りをひそめている。
その証拠に事件の謎は下巻の中盤でかなりページを残しながら、あっさりと明かされる。

そう、この作品はリスベット・サランデルの真実を知るための物語だ。

作品を通じ、彼女が送ってきた人生を知り、彼女がどのような信念に基づいた行動をとるのか見届けることになる。

登場人物を整理する

主人公のリスベットと前作でタッグを組んだミカエル、そして犯人はすんなりと名前を覚えられるが、その他の登場人物については苦労する方が多いのではなかろうか。

スウェーデン人の名前に馴れない私にとって、「ヴェンネルストレム」「サンドストレム」といった人名を脳内で音読するのは非常にしんどい作業だった。

簡単ではあるが、物語を通じて登場する人物で絞り込み、ざっくりとしたグループ分けをすることで整理してみようと思う。

※とくに重要な人物および登場回数が多い人物は太字とした。

主人公

  • リスベット・サランデル
  • ミカエル・ブルムクヴィスト

リスベットの家族・仲間

  • ミリアム・ウー(友人・やや恋人)
  • パオロ・ロベルト(友人・元プロボクサー)
  • ホルゲル・パルムグレン(元後見人・弁護士)
  • ドラガン・アルマンスキー(元雇い主・ミルトンの社長)
  • アグネータ・ソフィア・サランデル(母)
  • カミラ・サランデル(妹)

ミカエルの仲間・ミレニアムのメンバー

  • エリカ・ベルジェ(共同経営者・愛人)
  • クリステル・マルム(共同経営者)
  • マーリン・エリクソン(従業員)
  • モニカ・二ルソン(従業員)
  • ロッタ・カリム(従業員)
  • ヘンリー・コルテス(従業員)
  • アニカ・ジャンニーニ(妹・弁護士)
  • グレーゲル・ベックマン(エリカの夫)
  • ダグ・スヴェンソ(人身売買を取材するフリージャーナリスト)
  • ミア・ベルイマン(ダグの恋人・犯罪学研究者)

捜査メンバー(警察・検察など)

  • リカルド・エクストレム(捜査責任者・検察官)
  • ヤン・ブブランスキー(現場責任者・刑事)
  • ソーニャ・ムーディグ(刑事)
  • イェルケル・ホルムベリ(刑事)
  • ハンス・ファステ(刑事)
  • クルト・スヴェンソン(刑事)
  • ソニー・ポーマン(ミルトンから派遣)
  • ニクラス・エリクソン(ミルトンから派遣)

リスベットの敵・クソ野郎ども

  • ザラ
  • 金髪の巨人
  • マグヌス・ルンディン(バイククラブの総長)
  • ソニー・ニエミネン(バイククラブのナンバー2)
  • アト・ランタ(巨人の仲間)
  • ハリー・ランタ(巨人の仲間・アトの弟)
  • ニルス・ビュルマン(リスベットの後見人・弁護士)
  • グンナル・ビョルク(売春客・公安警察幹部)
  • オーケ・サンドストレム(売春客・フリージャーナリスト)
  • ベーテル・テレボリアン(リスベットの元主治医・精神科医)

ミレニアム2のストーリーについて

前作に比べ作品の特徴的な部分に変化があると書いた。

変化はリスベットにも起こっていた。

上巻でリスベットは世界中を旅する。

常に何かと戦っているストックホルムでの生活から解放され、あまりにも人間らしいその姿にいくらか戸惑うと同時にとても嬉しい気持ちになった。

しかしそれは、ほんの束の間、嵐の前の静けさである。

ミカエルはダグ・スヴェンソン、ミア・ベルイマンという、人身売買について追いかける二人と出会い、彼らの取材内容を雑誌「ミレニアム」の記事、そして書籍として世間に公表することを決めた。

女性の人身売買は、人権侵害という犯罪以外のなにものでもない。 — 本書より引用

人権尊重を掲げる憲法を持つ国家は数多くあるにもかかわらず、このような問題はスウェーデンのみならず日本を含めいたるところに存在する。

男性たちが中心となり作り上げた現代社会には構造的な欠陥があるからか、問題が問題として認識されにくい現状がある。

人身売買と売春に関係する犯罪の九十九・九九パーセントは警察に通報されておらず、かりに通報されても起訴に行き着くことは稀にしかありません。 — 本書より引用

ダグとミアが調査してきた内容にはスウェーデン国家をひっくり返すほどの威力があるとミレニアムの面々は確信し準備を進めていた。

だがこれはパンドラの箱だった。

この問題は、スウェーデンの奥深くに潜む闇の部分を引きずり出すことにつながっており、ある殺人事件によりその行く手を阻まれてしまう。

そして静けさは去り、嵐が巻き起こる。

この殺人事件に旅行から帰国したリスベットが巻き込まれてしまう。

この事件の謎解きを追いかけるだけではただのミステリだが、そうはならない。

本作はリスベットを知る物語だと書いた。

この事件の、そしてダグたちが暴こうとした事実に挑むことは、すべてリスベットの真実につながる。

そこには、十二歳からたった一人で世界と戦うことを運命づけられた少女の姿があった。

そして大人になった彼女がその運命に抗い、固い信念を胸に抱き、命をかけて行動する姿に、私は完全に心を奪われてしまった。

リスベットォォォォォォォォォッッッ!!!!!

と心の中で叫んだ瞬間が何度あったことか。

ぜひ「ドラゴン・タトゥーの女」から始めて本作を読んでほしい。

そして一緒に「リスベットォォォォォォォォォッッッ!!!!!」と、叫んでほしい。

あるいは、もうすでに叫び済みの人とこの思いを分かち合いたい。

そして(いい意味で)憎たらしいことに、本作は完全に終わらない結末となっている。

安心させてくれる話になってるのか全然わからんけど早く三作目を手に取り安心させてほしい。

これはいったいどうなってしまうんだ!?

リスベットォォォォォォォォォッッッ!!!!!

その他に気になったことをいくつか

リスベットに変化があると書いたが、決定的な場面がある。

怒るでもなく憎しみに燃えるでもない、リスベットの姿だ。

終始満面の笑みをうかべつつ、セーデルテリエまで記録的な速さで走り抜ける。 — 本書より引用

バイククラブのメンバーをブッ飛ばし、奴らのハーレーをかっさらったあと、小型のカワサキしか乗ってこなかった彼女がヘルメットの下で、一瞬のぞかせた表情である。

涙があふれてくる。これまでに泣いたことが一度でもあったかどうか、はっきり思い出せない。 — 本書より引用

こちらは、自分の身代わりに大切な友人であるミミが大けがを負ったことを知り苦悶する姿だ。彼女は誰かのために涙を流すことができるのだ。

この2つの場面はふとした瞬間を描写したものであるが、本作で現れた彼女の変化を象徴するものとして印象に残った。

その他に、前作と同様に各部の扉に文章が引かれている。

本作では数学の方程式について説明する文章が引かれており、物語においてリスベットが数学に傾倒している様子もある。

どこにどうつながるのか分からずにいたが、命を懸けた勝負に挑む間際、突如彼女がフェルマーの定理を理解するシーンが登場し印象深いアクセントとなる。

が、これにはもっと意味があるのかもしれないと思うのだが、数学に明るくない私にはわからなかった。

誰か教えて頂けるとありがたい。

あとは、リスベット・サランデルの「サラ」についてのエピソードも、何んとなしに引っかかっていた音だったのが繋がり「なんだって!?」と、やはり心の中で叫んでしまった。

前作にも増して没頭できる素晴らしい作品だった。

続編の感想はこちら

『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』 スティーグ・ラーソン 【読書感想・あらすじ】

あらすじ 宿敵ザラチェンコと対決したリスベットは、相手に重傷を負わせるが、自らも瀕死の状態に陥った。だが、二人とも病院に送られ、一命をとりとめる。この事件は、ザラチェンコと深い関係を持つ闇の組織・公安警察特別分析班の存在と、その秘密活動が明るみに出る危険性をもたらした。

著者について

スティーグ・ラーソン Stieg Larsson
1954年スウェーデン北部に生まれる。スウェーデン通信でグラフィック・デザイナーとして20年間働き、英国の反ファシズムの雑誌『サーチライト』に長く寄稿する。1995年、人道主義的な政治雑誌『EXPO』を創刊し、やがて編集長を務めた。日に60本もタバコを吸うヘビースモーカーで、仕事中毒でもあった。パートナーである女性の協力を得て2002年から〈ミレニアムシリーズ〉の執筆に取りかかり、2004年に三冊の出版契約を結ぶ。2005年、第一部『ドラゴン・タトゥーの女』が発売されるや、たちまちベストセラーの第一位になり、三部作合計で破格の部数を記録、社会現象を巻き起こした。しかし、筆者のラーソンはその大成功を見ることなく、2004年11月、心筋梗塞で死去した。享年50。 — 本書より引用

訳者について

ヘレンハルメ美穂
国際基督教大学卒、パリ第三大学修士課程修了、スウェーデン語、フランス語翻訳家 訳書『ミレニアム』ラーソン(共訳/早川書房刊)他 — 本書より引用

山田美明
東京外国語大学英米語学科中退 訳書『ルワンダ大虐殺』ルラングァ他 — 本書より引用

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