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【映画】 82年生まれ、キム・ジヨン を観てきました【感想】

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出典:映画.com

2020年10月9日に劇場公開された韓国初の映画作品「82年生まれ、キム・ジヨン」を観てきましたので感想を記したいと思います。

若干のネタバレを含みます。

映画を観たキッカケ

最近、Netflixで話題となっていた韓国ドラマ「サイコだけど大丈夫」「梨泰院クラス」「愛の不時着」を視聴しました。

いずれも楽しめる作品でしたし、出演する役者さんが主演以外も被っておらず、韓国における映像作品の制作力、層の厚さに圧倒されました。

その影響もあってか、この秋公開の映画をチェックしていた時、自然とこの作品に気持ちが反応しました。

Netflixで観たドラマ作品はいずれも起伏の多いストーリーでしたが、本作はじっくりと浸れる作品の予感がしたので、ぜひ観てみたいと思ったのです。

映画「82年生まれ、キム・ジヨン」とは?

2016年10月に発売された小説を映像化した作品です。

小説は韓国でベストセラーとなったほか、世界16か国で翻訳されたとのこと。(日本では2018年12月8日に筑摩書房より翻訳版が出版 [*1])

世界中に読者が広がった理由のひとつとして、この作品が普遍的なテーマを含んでいることがあると思います。

それを象徴するのが、作品タイトルでもあり主人公の名前でもある「キム・ジヨン」。

著者が主人公の名前を決定するのにあたり、1970年代後半から1980年代初頭に、最も多く登録された女の子の名前「ジヨン」、そこに最も一般的な名字の一つ「キム」を組み合わせたとのこと。

김지영씨, 잘 지내나요 - 시사IN

출산 열흘 전까지 프로그램 기획안을 썼다. 아이를 낳는 것과 일을 그만두는 것이 ‘같은 일’이라고는 생각하지 못했다. 불규칙한 출퇴근 시간도, 베이비시터를 고용하는 데 드는 비용도

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つまり、この作品はどこにでもいる「彼女」あるいは「あなた自身」を描いた作品と言えるかもしれません。

映画のあらすじ

主人公のジヨン役の俳優「チョン・ユミ」さんは、本作で初めて知りました。

一方、ジヨンの夫を演じるコン・ユさんは、「新感染 ファイナル・エクスプレス」というパニックムービーのような映画作品で見かけたことがあり、素敵な演技をする役者さんという印象がありました。

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新感染 ファイナル・エクスプレスの作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。ソウルとプサンを結ぶ高速鉄道の中で突如として発生した、謎のウィルスの感染拡大によって引き起こされる恐怖と混沌を描い

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二人は都市部で暮らす夫婦であり、夫はサラリーマン、妻は専業主として幼い子供の子育てに追われています。

物語の序盤、夫のデヒョンは年末は実家に帰らずゆっくり過ごしたいと妻ジヨンに提案します。
ジヨンは、夫の実家なのだからあなたはゆっくりできること、帰省しないと怒られるのは自分であることを指摘します。

そして年末、彼らはデヒョンの実家に帰省し、ジヨンは姑に気を使いながら、年始の料理支度に追われることに。

義理の姉(つまりデヒョンの実姉)が遅れて到着したとき、とうとう彼女は溢れ出てくる感情を抑えることが出来なくなります。

娘の帰省を喜ぶ姑に対し、娘が帰ってきて嬉しいのだから、ジヨンも母親の元に返してあげてほしい、と。


突然の彼女の急変に驚きましたが、その兆候は冒頭からところどころに合ったように思います。
また、「私も親元に帰りたい」ではなく、「ジヨンを返してあげて」という言い方は少し変です。

まるで誰かが彼女に乗り移ったかのよう。


結婚し、出産するまで、ジヨンはそれなりに野心を抱き仕事に取り組んでいました。
回想シーンでは、幼少から自立心が強かった様子がうかがえます。


そんな彼女が、夫の家族、愛する夫の期待に応え出産し、その後の育児生活のなかで、彼女のこころは少しずつ損なわれていったのです。

彼女は擦り減っていく自分を守るため、心を病んだのかもしれません。

ときどき記憶を失い、その瞬間、誰かが乗り移ったような言動をとる姿に、夫は激しく動揺します。


ジヨンは、家族はどう乗り越えていくのか、というのが物語の大筋となります。

映画の感想

孤独な育児

核家族化が進んだ現代社会での子育ては、多少の差はあるとはいえ、どの地域でも同様の苛酷さがあるように思います。

感情を全身で爆発させながら、すべてを吸収し成長を遂げている最中の「子」という存在。

そんな巨大なエネルギーの塊と、ただでさえ日常で疲弊した大人がひとりきりで対峙する、そんな場面がいたるところにあるでしょう。

こういった状況は、責任感が強い人であればこそ余計に陥いってしまうでしょうし、手を差し伸べてくれる人や仕組みは限られているのが現状です。

子供連れであることを歓迎しない場所は、都市部のような密集したエリアでは特に多いでしょう。

レストランで子供が飲み物をこぼしてしまいジヨンが若者たちに陰口をたたかれる場面、公園で心無い声を聞かされる場面などは、とても胸が痛みます。

夫のデヒョンはいくらか育児を手伝いますし、身近な理解者であると言えます。

しかし、実際に人々が仕向ける刃にさらされ、必死に子供を抱きしめて戦ったのはジヨンです。

そんなとき、こんなにもたくさんの人がいるのに、彼女はひとりです。

自分を大切にすることは重要ですが、自分だけを大切にするような社会は、いつか自分に返ってくる諸刃の社会です。

女性としての立場

ジヨンが仕事をしていたころ、彼女は企画チームの選抜を目指していましたが男性社員が選ばれ彼女は選に漏れてしまったことがありました。

その理由は、どこにでも起きている、古い思考によるものです。

女性であることを理由にされる場面は数多く登場します。

ジヨンの父親は、息子だけに万年筆をプレゼントします。

誰よりも「書くこと」を重んじているのはジヨンなのに。

当人も、周りも、性別を理由に「仕方がない」とあきらめてしまう状況は、まだそのことが認知されていない旧い世紀ならいざ知らず、現世では脱するべきものだと思います。

生きていくこと

幸いジヨンには、心から彼女を思ってくれる人がいました。

夫は彼女を失ってしまうのではないかと、心から苦しみます。

そして、彼女の母親も全力で彼女を守ろうとします。

この母親役のある「キム・ミギョン」さんは、他のドラマでも観たことがあり大好きな役者さんです。

Mi-kyung Kim - IMDb

Mi-kyung Kim, Actress: Kim Ji-young: Born 1982. Mi-kyung Kim is an actress, known for Kim Ji-young:

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ジヨン自身も彼女の状況と向き合うことを始めます。

精神科のカウンセラーが、「治療の最も難しいポイントは、患者当人が来てくれることだ」「来院してくれた時点で治療の半分以上は完了したようなもの」というような内容を言っていたのが印象に残っています。

精神的な病にかぎらず、自分自身と向き合うことはとても難しいことですし、それができなければ苦しさの原因も去ることがありません。

彼女を支えた人たちも素敵ですし、勇気をもって自分と向き合うジヨンはとても輝いて見えました。

最後に まとめ

決してドラマチックではない日常を積み重ねていくような場面が続く映画です。

「キム・ジヨン」というどこにでもいるひとりの人間の姿を描いた物語です。

ですが、多くの場面や言葉が、心の深いところにじんわりとしみ込んでゆく素晴らしい作品でした。

彼女の気持ちの動きに呼応して流れる音楽もまた素晴らしかったですし、エンディングの曲の歌詞もじんわりとした余韻を残してくれます。

大切な人を守れる人間でありたいし、ひとりでも多くの人の呼吸が楽になる空気を作り出す気持ちで社会に参加したい、そんなことを強く思いました。

脚注

*1 韓国で社会現象『82年生まれ、キム・ジヨン』邦訳刊行。女性から絶大な共感(cinra.net

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