白杖ユーザーになった日|補装具費支給制度で購入するまでの流れと使い始めの記録
初稿:

2026年7月28日。私は白杖ユーザーになった。
この記事では、身体障害者手帳の補装具費支給制度を使って白杖を購入するまでの流れと、実際に使い始めて感じたことをまとめる。制度の概要だけでなく、手続きでつまずきやすいポイントも記録した。
本記事の概要
最初に要点だけまとめる。
- 白杖は「安全に歩くための道具」であり、周囲に視覚障害があることを知らせる役割もある
- 補装具費支給制度の手続きは、自治体ごとに運用が異なる
- 実際には「窓口に先に相談すること」が最短ルートだった
- 購入は原則として決定通知後に進めるのが安全
白杖とは
白杖(はくじょう、white cane)は、視覚障害者が歩行時に路面状況や障害物を把握し、安全を確保するために使う杖である。
白杖(はくじょう、英語: white cane)とは視覚障害者(全盲およびロービジョン)等の、道路の通行に著しい支障がある障害者が、歩行の際に前方の路面を触察する等に使用する白い杖である[1]。大きさは直径2センチメートル程度、長さ1メートルから1.4メートル程度のものが一般的である。 — 白杖 - Wikipedia より引用
白杖の主な役割は以下のとおりである。
白杖の主な役割は、
- 白杖を持つ者が視覚障害者であることをまわりの人に周知させ、
- 歩行に必要な路面の情報を収集し、
- 障害物や段差などを検知し危険から身を守ること、
の3つである。— 白杖 - Wikipedia より引用
補装具費支給制度とは
補装具費支給制度は、身体障害者手帳を持つ人が必要な補装具を購入・修理する際に、費用の一部または全部の支給を受けられる制度である。
制度の目的は明確だが、現場の運用は自治体差がある。ここを先に理解しておくと、手続き中の混乱が減る。
経緯:白杖ユーザーになるまで
今年4月に錐体桿体ジストロフィと診断され、6月に身体障害者手帳を取得した。
視覚に関する記録 09 - 錐体桿体ジストロフィと診断された日
視野欠損・夜盲・羞明の検査結果を受け、約2年の通院の末に指定難病「錐体桿体ジストロフィ」と診断された記録。通院当日の心境、ルテイン摂取、障害者手帳申請、失明に備える今後を綴る。
視覚障害による身体障害者手帳の交付当日、福祉課での受け取りから医療費助成、福祉タクシー、NHK減免などの申請手続き、東京都の手厚い支援、身体障害者になった日の心境までを記録した記事です。
視界の異常を自覚してから約4年、モノにつかまり壁づたいに歩く生活を続けてきた。白杖があれば安全に歩けるはずだと分かっていても、心理的なハードルは簡単には越えられなかった。
白杖があれば、もっと安全に歩けるのではないかとの思いはずっとあった。
本来であれば「必要だから白杖を持つ」以上の理由はないはずだ。私の場合は、診断、手帳取得、白杖という順序を踏んで、ようやく購入に進めた。
白杖購入までの流れ
前提として、私は東京都在住で、東京都の補装具費支給制度を利用した。
公式案内の流れ
東京都福祉局の案内を整理すると、次の流れである。
- 申し込み
- 市区町村の窓口に相談する
- 判定
- 東京都心身障害者福祉センターに来所して補装具の判定を受ける
- 手続き
- 市町村の窓口で補装具費支給の手続きを行う
- 補装具費支給券交付
- 「補装具費支給券」を受け取る(受け取り方は市区町村によって異なる)
- 補装具の購入等
- 補装具費支給券を持って、補装具の購入や修理を行う
実際に私が進めた流れ
実体験としては、次の順で進んだ。
申し込み
- 市区町村の窓口に相談
- その場で申請書を受け取り、必要事項を記入して提出
- マイナンバーカードと身体障害者手帳の提示が必要
補装具店で白杖選びと見積もり作成
- 補装具店で白杖の種類と長さを相談して選定
- 見積もりを作成してもらう
- 私のケースでは、市区町村への提出は補装具店が郵送で対応
判定(決定通知)
- 約1か月後、郵送で補装具費支給決定通知書が届く
- 支給券が同封されていなかったため、市区町村窓口に確認
- 補装具費は市区町村から補装具店に支払い済みで、支給券は不要だった
補装具の購入
- 補装具店に行き、白杖を受け取る
- 通知書の提示等は不要、個人負担額のみを支払う
手続きで注意すべきポイント
今回の経験で、特に重要だと感じたのは次の3点である。
- ネットの情報は制度の全体像の把握には有用だが、自治体運用の細部までは一致しない
- 最初に市区町村窓口と補装具店へ相談すると、手続きの分岐を早めに確認できる
- 購入は決定通知が手元に届いてから進める
厚労省、都道府県、自治体の情報はそれぞれ有用だが、運用が完全に同じとは限らない。福祉関連の手続きは、まず相談して個別条件を確認するのが最も確実だった。
装具の購入には、「判定」というプロセスが必須となる。判定には申請書の他に、補装具店が作成した見積書が必要である。判定で支給が決定されて初めて、装具の購入が可能となる。
費用の支給も自治体ごと、装具の種類ごとに異なる。とにかく相談、確認を都度行うことが重要である。
購入した白杖の種類
購入先は、日本点字図書館に併設されている補装具店である。
購入したのは、IDケーン(折りたたみ)パームチップ(10,900円)。
補装具は非課税品のため、購入時に消費税はかからない。私のケースでは、公費負担額は7,012円、自己負担額は3,888円だった。
長さは85cmから132cmまで選べる。私は132cmを選択した。脇の下からつま先までを目安にすると、手に持ったときに歩幅2歩分先を探れる長さになる。

折りたたむとカバンに入るサイズになる。なお、内部ゴムの負担を減らすため、未使用時は伸ばした状態で保管するよう案内を受けた。

先端の石突は、パームチップと呼ばれる丸い形状を選択した。標準的な細い石突と比べると、細かな障害物や段差に引っかかりにくく、前進しやすいと感じた。
光に反射するテープが全体に巻かれており、夜間の安全面も考慮されている。
白杖を使い始めて分かったこと
日本点字図書館は、事前に電話予約をすると、補装具店スタッフが種類や長さを丁寧に説明してくれる。受け取り時には、歩行しながら使い方まで指導してもらえた。
現時点で教わった使い方を簡単にまとめる。
通常の歩行時
- 利き手で握手するように持ち、人差し指をグリップに添える
- 上体を起こし、顔を正面に向ける
- 持ち手を体の中心に置き、先端を地面に軽く触れながら歩く
- 一歩進むごとに前方へスイングし、障害物や段差を探る
階段の上り
- ペンを持つように持ち、先端を段差に軽く触れさせながら上る
- 段差の感触がなくなったら、さらに一段進む
階段の下り
- 通常歩行時と同じ持ち方で、先端を段差に軽く触れさせながら下りる
- 段差の感触がなくなったら、さらに一段進む
背中を丸めて縮こまるのではなく、自分の存在を周囲に知らせる意識で歩くことが重要だと教わった。これは自分だけでなく、周囲の安全にも直結するポイントだと感じている。
一方で、まだ不慣れなため、白杖操作に意識が集中してしまい、視覚情報や周囲の音を取りこぼす場面がある。安全のために使う道具なのに、使い方が未熟だと逆に危険が増える。この感覚は、今後の練習課題として強く認識している。
白杖を持つ感覚は、腕が長くなって地面に直接触れられるようになるイメージに近い。これまで得られなかった情報が手元に返ってくる感覚がある。
よくある疑問(FAQ)
白杖は身体障害者手帳がないと購入できない?
購入自体は可能だが、補装具費支給制度を利用する場合は手帳や自治体条件の確認が必要になる。まずは市区町村窓口への相談が確実。
補装具費支給制度の流れは全国共通?
制度の枠組みは共通でも、実務運用は自治体ごとに異なる。支給券の扱いなど、細部は必ず自治体窓口で確認したほうがよい。
白杖の長さはどう決める?
私のケースでは、脇の下からつま先までを目安に132cmを選んだ。最適長は歩き方や用途で変わるため、補装具店で相談しながら決めるのが安全。
まとめ
公共サービスも民間サービスも、支払い側の導線は効率化が進んでいる一方、給付を受ける側の導線は複雑で不便が残ると感じる場面がある。
福祉関連はとにかく相談することで前進しやすくなる。
白杖を持つこと自体に葛藤はない。ただ、視力がさらに低下する前に使いこなせるかという不安はある。
完全に体の一部になるまで時間はかかるが、これからも練習を重ねていきたい。生きるために。